宮城県仙台市在住の伊藤 謙信さんから、由利高原鉄道鳥海山ろく線の旅のレポートを寄稿いただきました。
まだ乗車したことない方は想像を膨らませ、既に乗車したことのある方はその当時を思い出しながらお読みいただければと思います。
それでは鳥海山ろく線の旅にLet’s Go!
北東北の地方鉄道を巡りました。三陸鉄道、青い森鉄道、津軽鉄道、弘南鉄道(大鰐線、黒石線)、由利高原鉄道、八戸臨海鉄道、秋田臨海鉄道とあわせて廃止路線も巡りました。旧十和田観光鉄道、旧南部縦貫鉄道、旧下北交通大畑線、未成線の大間鉄道の遺構などを見てまいりました。
改めて北東北にはたくさんの魅力的な私鉄線が走っており、先人たちの開通に対する思いに馳せることができました。
その中で久しぶりの乗車した由利高原鉄道の紹介です。
由利高原鉄道は今年開業40周年の地元密着の第三セクターのローカル鉄道線です。旧国鉄矢島線を引き継いだ路線です。愛称は「鳥海山ろく線」名峰の鳥海山が車窓から見れる路線です。車両も秋田(akita)色が強い車両ですが、鳥海山(山頂部分)は確か山形県側の山?と思いつつも、車両や駅舎にもガッツリ「鳥海山」をアピールしているので、両県の大切な鳥海山と理解しながら乗車します(笑)
路線の始まりはJR羽越本線羽後本荘からです。現在は由利本荘市の代表駅になっております。駅舎もJR線と共用の橋上駅舎に変わっており、近代的な駅になっていました。由利高原鉄道線は東側のホームから発車となります。

当日乗車した車両は「青色」のYR3000型の車両でした。ボックス席と出入口はロングシートの車両でボックスシート内に大きなテーブルがあり、この手の車両では最大級のテーブルです。駅弁なら4つくらいは余裕で置ける広さです。

羽後本荘駅を出発するとしばらく羽越本線と並走します、JR線との渡り線(接続線)がなくなっており、鉄道連絡(車両の搬入など)ができないようになっており、個人的には寂しく思います。JR線と別れたあたりで最初の停車駅薬師堂に停車しました。1駅でしたが、市内線として活用があるようでした。JR線と並走区間ですので、なかなかタイミングが合わないかもしれませんが、よい並走の列車写真が撮れると思います。
列車は東へ向け走り続けます途中に映画のロケにも使われそうな木造校舎がある学校脇を通過し(廃校した小学校らしいです)、みごとな田園地帯を走行します。春の水張り、夏の緑の田園、秋の黄金色の田園風景を走る由利高原鉄道は季節ごとに実にきれいな田園地帯を走ります。当日は稲穂がちょうど垂れ気味の日でしたが、実にきれいでした。
運転手さんのおススメの駅の曲沢駅に到着、田んぼの中にポツンとある小さな駅です。1面1線の小さなホームに小さい待合室がある駅(停留所)から見える鳥海山は実に見事です。JR羽越本線側から見る鳥海山とまた違った角度で他の山と相まって雄大に見ることができます。実にきれいでした。天気のよい日に乗車できるチャンスがあれば是非乗ってほしいです。
鳥海山を見ながら集落に入ると唯一の列車交換ができる前郷駅に到着です。基本は上り(羽後本荘方面)が先に到着するダイヤになっているようです。この駅では珍しくなったタブレット交換が今も行われています。(現在では日本で4つの鉄道線のみだそうです)信号機は腕木式信号機から灯式信号機に変りましたが、鉄道の安全の原風景が見れる貴重な駅です。ちなみに列車を見送った後には、駅舎内でタブレットの閉塞作業を見ることもできました。アナログですが確実な安全運行システムです。
田園風景の中を列車は右へ左へカーブしながら山間部へ近づいてきます。車両の最前部の右側は
大きな窓になっており、全面展望のできる「かぶりつき」ができるスペースがあります。小さな子供さんはよろこぶでしょう。真下を見ると線路と枕木がとても速く見えます。連結器を見ながらだとちょっと迫力があります。汽笛を鳴らすと唯一のトンネルに入ります、終点まじかなので、500mくらいでも長く感じます。トンネル内もゴツゴツした感じの肌感になってますがキレイに整備されたトンネルで福島・新潟の奥只見シルバーラインを車で走行しているようなトンネルです。トンネルを抜けると民家などが増え、終点矢島駅に到着です。





駅舎内には売店、カフェなどがあり、地域と一緒に頑張っている感じが強く伝わりました。ここで有名なのが、「徹子の部屋」ならぬ「マツ子の部屋」があります(マツ子と言ってもマツ子デラックスさんではありません)私が訪問した際は「充電中」とのことでした。残念… 普段は着物を着てお客さまのおもてなしをしているとのことです。 「マツ子の部屋」は売店を始めたおばさんが、いろいろ訪問した方のお話し相手になり、人生相談もしてくれるそうな…なんともおもしろい駅です。終着駅で「人生相談」をして、折り返しで終着駅が始発駅になって元気をもらって帰る鉄道なのかなと思いました。

駅舎も車両もよく手入れがされ社員さんの鉄道愛が感じられました。乗車時間が短い鉄道ですが、車両内にもしっかりトイレがあったり、窓もしっかり清掃をされており自慢の鳥海山がよくみることができました。日中の1往復は「おばこ号」として運行しているようです。「おばこ」とは若い女性とのことです。「おばこ」のイメージ姿でアテンドをしてくれるようです。1往復ですが地元の方、観光客向けとがんばる鉄道がとても感じられた鉄道線でした。 2025.9.1 伊藤 謙信